ここでは、いわゆる婚礼セットなどの大型の洋服ダンスのお話をしたいと思います。
作業員にとって最も慎重に扱うべき家具の一つであることは間違いありません。やはり高級なものが多いことと、それなりに重量と分解・組み立てなどのテクニックを要するからです。小物やその他の家具を全部搬出しきって落ち着いたところで、こういった分解が必要な家具に取り掛かることが多いです。
それまでの小さい荷物などを扱っていた作業モードから気持ちを切り替える必要があります。例えば汗が洋服ダンスの内側の部分についただけでもシミになったりしますから大変です。大きな現場で作業員がたくさんいる場合は、最初から大きな家具を扱う担当を指名して、その者に慎重にやらせることを私なんかは心がけていました。
搬入時に希望の部屋の入り口を通らないような場面に遭遇することもあります。そういった場合は窓から入れるのですが、これが2階や3階で、障害物があって重機などが設置できない場合は人力による吊り作業になります。窓の形状や手すりなどの支点になる部分の強度によってはそこに負担を掛けられない為に、洋服ダンスの扉自体を分解することもあります。
一般的な家具の重量のほとんどは扉部分にあります。そこを分解することで、体積は大きい軽い箱上の本体と扉部分に分かれます。扉は当然階段や入り口から搬出・搬入して、軽い本体部分のみを吊り作業で搬入したりします。
この扉を外すテクニックは少し熟練が必要です。外した後、元に戻すのが少し大変です。金具の部分を適当に触ると、経年劣化なども合わさってその部分が割れたりすることもあります。また、扉の分解・組立てはかなりの時間を要しますから作業の予定時間を大幅に超えることにもつながります。
洋服ダンスの中のハンガーに掛かっている洋服は、今の引越し業者であればほとんどがサービスで当日レンタルできるハンガーボックスというものを車載していて、それに掛けて運ぶことが出来ます。ただ、一般的なご家庭の洋服の量を想定して車載数を決めていますので、洋服の量が多い場合は営業マンに余分に用意することをお願いしましょう。
皆さんに作業当日までにやっておいて欲しいことは、ハンガーに掛かっている洋服の下の影になっている部分にある荷物類の荷造りです。ハンガーに服を掛け終わった後に一杯色んなものが出てきます。洋服ダンスは吊り作業などの変則的な運ばれ方をするケースが多い為、中は完全に空にしていることが必要です。
運搬中に傷などが入って大きな問題になるのもこの家具の特徴です。家具類に傷が入った場合、新品になって返ってくるということはありませんが金銭での示談の他、修理などの措置をとることがあります。
この修理なのですが、傷があったことを知っていても何処に傷があったのか分からなくなるくらい完璧に治すテクニックを持っている修理屋さんというのがあって、各引越し業者さんはそういった業者と提携しています。破損ということになった場合で、引越し業者側が修理を申し出てきた時は検討してみてください。 |