私が引越し業者に就職して間もない頃の話です。まだ私はドライバーの資格が無く作業員でした。そのお客様の営業担当でもあった先輩が現場責任者でした。
引越しをすることになった理由は離婚です。離婚でも割合に平和に別れるケースとそうでないケースがあります。この現場の場合は後者の様でした。お客様は奥様側です。
まず、旦那さんと暮されていた家から奥様側の荷物だけを搬出します。しかもご主人さんがお仕事にいって家にいない時間に搬出してしまうというのが条件です。これは奥様立会いの下、問題なく済みました。
そこから3時間ほど掛かる奥様のご実家へ荷物を届けることになるのですが、何とその途中にご主人のご実家に立ち寄って、奥様の婚礼家具を引き取るということが契約に盛り込まれていました。ご結婚当初、旦那さんのご実家で同居されていたようで、しばらく経ってそこから出る時に婚礼セットを置いたままにしてあったのです。
問題なのは、そのご主人のご実家に婚礼セットを引き取りに行く際に奥様は立ち会わず、我々のみでご主人のご両親宅から家具類を引き取る必要があったことです。その時に奥様側から委任状を渡されていました。この「引越し業者さんに私の荷物を引き取ってもらうことを委任します」という内容のものです。これをご主人のご両親にお見せして作業開始です。奥様側から言われたタンス類を預かって、少し離れたところに止めたトラックまで運びました。
そこで問題が起こりました。ご主人側のご両親からすると、そのタンス以外に色々奥様側の荷物があるので、あれもこれも持って行け!と言われるのです。それは委任状の内容と異なるので我々はお引き受けできない・・ということを伝えて何とかその場は収まりました。
そしてです。いよいよ奥様のご実家へトラックを走らせることになりました。しかし、奥様のご実家は田舎で、田舎に引越しのトラックが来るとすぐに噂になると・・・離婚して帰ってきたということが近所に分かるとまずいということで、暗くなってから搬入というのがまたまた条件でした。
暗くなってからって・・・真夏です。夜8時くらいにならないと暗くならないです。暗くなってようやく搬入開始。終わったのが夜の10時くらいだったです。そこから3時間掛けて会社まで帰りました。日付が変わっていたのは言うまでもありません。
引越し業者に入って間の無い頃でしたから、引越し屋さんて大変だな・・・というのが正直な感想でした。 |